第4回地域交通人材育成アカデミー:講演会を開催しました

2023年12月22日(金)オンライン会議室ZOOMにて、第4回東御市における共創による地域交通人材育成アカデミー講演会を開催いたしました。

第4回講演会は講師として、兵庫県豊岡市より株式会社アンズケアモビリティ事業部の岡 忠司(おか ただし)氏をお迎えし、「地域の未来へつながる介護タクシーのはじめ方」と題してご講演いただきました。

講演の中では、介護タクシー事業をスタートするための具体的なプロセス、デイサービス事業と介護タクシーを同時運営することでの相乗効果について、さらに地域ビジネスとしての展開についてお話しいただきました。

Contents

介護タクシー事業開業のプロセス

はじめに、介護タクシー事業の概要として、介護タクシーの利用対象者や事業用の車両についてお話しいただきました。

介護タクシー事業では、用いる事業用車両の種類によって、運転者に必要な条件が異なります。

福祉自動車ではない車両を用いる場合、乗務する運転者は2種自動車免許に加えて介護福祉士、訪問介護員、居宅介護従事者などの資格所有者であることが条件ですが、乗り降りのためリフトなど設備を備えた福祉自動車を用いる場合は、福祉系の資格取得は努力義務であり必須要件ではありません。

事業用車両の種類乗務する運転者の必須条件
福祉自動車ではない一般車
※セダン型等
普通二種免許+
介護福祉士、訪問介護員などの資格
福祉自動車を用いる場合
※リフトやスロープ等の設備あり
普通二種免許+
福祉系取得は努力義務
※必須要件ではない

介護タクシー開業の認可取得にあたっては、普通2種免許資格や福祉系資格などの所持、使用する車両や車庫などの設備、自己資金額などの確認事項があります。

事業計画や運行管理体制について経営許可申請書にまとめ、地域の運輸局に提出し、審査は2ヶ月程度。申請者本人が法令試験を受験します。国が定めた範囲で運賃設定を届け出し、認可後一年以内に運輸開始届けを提出します。

※2023年12月時点での情報です。また、申請にあたっての必要事項等は各自治体によって異なります

リハビリ特化型デイサービスと介護タクシー同時運営の相乗効果

デイサービス事業と介護タクシーを同時運営する上での相乗効果については、利用者同士やケアマネージャーなどの間で口コミが生まれやすく、自然にサービス利用者が増えていくことなどが挙げられました。

さらには、リハビリのために来所した利用者に向け、スマートフォンのモビリティシステムアプリの操作方法など、直接サポートでき、そうした取り組みが認知症予防等にもつながる利点があります。

地域の移動を支える交通網の拡大を目指して

豊岡市では2021年、福祉分野での革新的な「ちょい乗り500」プロジェクトをスタート。この取り組みは株式会社アンズケアが運送主体となり、デイサービス利用者が非通所日に、送迎車の空き席を利用して移動することができる外出支援サービスです。

通所施設の職員や送迎車が特定区域内で送迎を行い、施設の既存の送迎ルートに利用者宅を追加。運用コストを削減し、利用者は1回500円の利用料で安価に移動することができます。

2022年には、プロジェクトが地域交通共創モデル実証プロジェクトに採択され、「ちょい乗り拡大実証事業」としてさらに拡張。豊岡市内の3つの福祉事業所で利用者を相互に送迎する実証実験が行われました。

拡大モデルでは、福祉事業所スタッフが運転し、介護福祉士が管理・運営を担います。このプロジェクトは、自家用有償旅客運送制度とデジタル交通システム「福祉Mover」利用しています。

今後、豊岡市では医療介護事業者の協力を得て、デイサービスの送迎や介護タクシーの利用拡大など、新たな地域交通ネットワークの構築を目指しています。

講演後、参加者からは「開業費用はどのくらいか」「介護タクシー単体で開業した場合の顧客開拓は」「一般タクシー開業と介護タクシー開業の違いは」「既存の交通事業者と、ちょいのりプロジェクトの住み分けは」などの質問が上がりました。

介護タクシーの開業手順、そしてデジタルを使った地域交通の新しいアプローチなど、事業を通して地域コミュニティに貢献していくヒントをいただけた講演会でした。

岡 忠司〈おか ただし〉氏
株式会社アンズケア モビリティ事業部

  • 2010年 介護福祉士免許取得
  • 2011年〜 特別養護老人ホーム勤務
  • 2021年 株式会社アンズケア入社
  • 2021年 普通自動車第二種運転免許取得
    アンズケア内にモビリティ事業部立ち上げ
    豊岡市との連携による「ちょい乗り500※」実証実験開始
    ※デイサービス車両効率活用による高齢者外出支援
  • 2022年 介護タクシー「and Taxi」許認可取得・運行開始
  • 2023年 R5年共創モデル実証プロジェクトにて
  • 「地域モビリティカンパニー」立ち上げ準備中

合同会社まるごとは、長野県東御市での地域活性化の取り組みとして、地域の交通に関する課題解決を目指し、他の地域の成功事例を学ぶ全8回の講演会を計画しています。

デジタルを活用した地域活性化、まちづくりなどの取り組みに少しでも関心のある方はどなたでも講座にご参加ください。

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