交通を軸に東御の未来を考える ワークショップ
「移動と交流からはじまる これからの地域デザイン」意見交換会を開催しました。
| 日時 | 2025年12月23日(金)15:30-17:00 |
| 会場 | 東御市中央公民館 学習室9 |
| 参加方法 | 会場参加およびオンライン(Zoom) |
| 主催 | 東御まるごと共創プラットフォーム (事務局:合同会社まるごと) |
| ファシリテーター | 高橋靖典氏 森のイノベーションラボFUJINO・コミュニティマネージャー/中小企業診断士 |
開催趣旨

11月17日、12月2日の2回にわたり開催した「交通を軸に東御の未来を考える」セミナーには、「東御をより良い地域にしたい」という思いを持った多くの方にご参加いただきました。セミナーを発展させ、「実際に動き出すためにみんなで意見を出し合い、取り組みを考える場」としてワークショップを開催しました。当日は、ファシリテーターとして第2回セミナーの講師である高橋靖典氏にオンラインで参加いただき、第2回セミナーの内容も踏まえて議論を深堀いただきました。
ワークショップ

参加者は4つのグループに分かれ、「10年後の理想の東御市」を新聞記事の形式で表現するワークショップを実施しました。各グループでは記者役、市民目線の記事作成担当、事業者・行政目線の記事作成担当に役割分担し、「こうなったらいいな」ではなく「こういうふうに実現しました」という前提で、具体的な未来像を創作しました。
このアプローチは、現在の課題から積み上げて考えるのではなく、まず理想の未来を描き、そこから逆算して今何をすべきかを考える手法です。課題にフォーカスするのではなく、ポジティブな未来像を共有することで、前向きで具体的な議論が展開されました。
その後、描いた未来像に到達するために3年後・5年後に何が必要か、そして今何ができるのかを議論しました。
各グループから出された未来像
(1)魅力度ランキング全国1位の東御市
インフラ、教育、福祉が全て整い、コンパクトシティー化した状態で、どんな地域に住んでいてもいろんなものが生活圏内にあります。どんな世帯の方も住みやすく、東御市が難読市ではなく、全国の誰もが知っている市になっています。
(2)健康寿命日本一の東御市
健康寿命日本一とは、全世代が幸せという意味です。老若男女みんなに活躍の場があります。そのため北御牧の自治会活動などの好事例を広げたいと考えています。また、20代・30代の若者のニーズを把握し、実現しています。さらに、田中駅前が活性化していて、しなの鉄道の本数が増え、車両内がワーキングスペースとして使えるようになり、東御市を拠点とした多様な働き方が実現しています。中高生も地域で活躍したいという意欲があることから、地域活動を結びつけます。それらにより、健康寿命日本一を実現しています。
(3)住みたい街ナンバーワンの東御市
部活動の地域移行をきっかけに、スポーツに特化した街づくりが進み、幅広い層がスポーツを楽しむ環境が整っています。「地域の大人が地域の子供たちを育てる」という理念を大切にし、多様なスポーツ環境で子供の自己肯定感が育まれ、運動指数と健康寿命がアップしています。民間と行政の協力により交通課題が解消され、みんなが気軽に出かけられるようになったことにより、健康増進が図られ、医療費の削減に成功しました。また、第10回東御サマーフェスティバルが開催され1万人が来場しました。中央公民館で地域のサークル活動の発表、市民プールでワインとグルメパーティーが行われチケットは即完売、参加者の満足度も高まっています。
(4)餅つきでギネスに挑戦・東京都大田区との合同成人式
姉妹都市である東京都大田区との交流を深化させ、餅つきギネス記録に挑戦するとともに、大田区の子供たちが小学生の頃から東御市で農業体験などを通じて交流し、成人式を一緒に祝います。10年前に植えたブドウから作ったワインで20歳になった彼らが乾杯します。2000人規模の餅つきイベントで、老若男女が参加できる体験型プログラムとして展開します。
未来像を受けた議論
「(4)東京都大田区との合同餅つき・成人式」を未来像として挙げたオンライングループでは以下のような議論が行われました。
姉妹都市・大田区との連携強化
現在も大田区の小学生が休養村などで農業体験をしていますが、単発の関係に留まっています。これを毎年定期的な交流プログラムに発展させ、子供たちが東御市を「第2の故郷」「第2の親」のように感じられる関係性を構築します。大田区側でバスをチャーターして来訪することで、東御市側の交通負担も軽減できます。大規模イベント開催時の交通問題については、予約制のバス利用により参加人数をコントロールし、準備におけるロスも防げます。
農業×教育による新たな可能性
不登校児童が増加している現状(中学校で全国約15%)の中で、学校以外の居場所づくりの必要性が議論されました。神奈川県山北町の施設では、不登校の子供たちが山の中で鶏や豚を育てることで生きる力を身につけている事例が紹介されました。
東御市でも、畜産農家などを活用し、農業×教育のプログラムを展開する可能性が議論されました。動物とのふれあい体験イベントから始め、子供たちが農業や畜産に触れる機会を創出します。羊毛の加工体験など、衣食住を学ぶ総合的な教育プログラムへと発展させることができます。私立学校では特色ある教育が展開されていますが費用が高額になるため、公立学校のカリキュラムの弾力化により、例えば「学校に行かずに農業体験をしても出席とみなす」といった制度を行政が作ることで、費用負担なく多様な教育を提供できる可能性があります。
農家との継続的な関係づくり
都市部に住む人々にとって、農家との直接的なつながりを持つことは、食の安全保障の観点からも重要性を増しています。1年間かけて毎月違う農家を訪問し、様々な農業を体験するプログラムや、2年目以降は気に入った農家に通い詰めるといった段階的なプログラムも提案されました。既に市内の畜産農家では年間50人程度が見学や体験に訪れており、受け入れ実績があります。
未来像の実現に向けた課題と次のステップ
続いて、(4)グループでは課題と次のステップについて意見を出し合いました。
企画・マネジメント人材の必要性
素材(食材、自然環境、ワイナリーなど)は東御市に豊富に存在しますが、それらを組み合わせて魅力的なプログラムを企画し、実行するマネジメント人材が不足しています。ワインツーリズムなど、誰かを引っ張ってくるタイプの地域おこし協力隊の招聘や、実績ある人材のヘッドハンティングが必要です。2拠点居住で東京に籍を置きながら週の半分を東御市で活動するような形態も現実的です。
行政の役割
市役所には明確なプランニングと、生産者だけでは対応できない部分のサポートが求められます。コーディネーターを複数配置し、それぞれが競い合いながら多様なツーリズムを展開することで、偏りのない地域振興が可能になります。また、大田区との交流プログラムの定期化や、公立学校のカリキュラム弾力化など、行政でなければ実現できない仕組みづくりが重要です。
3ヶ月以内にできる小さな一歩
議論の最後に、各グループのメンバーが個人として「3ヶ月以内にやること」を宣言しました。市内の畜産農家への訪問、既に活動している北御牧の自治会活動への参加、若者へのヒアリング開始、子供たちを巻き込んだイベントの企画検討などが挙げられました。参加者同士で「一緒に行きましょう」という約束も生まれ、実際に動き出す兆しが見えました。
継続的につながる仕組み作り
議論全体のまとめとして、参加者全員でLINEグループを作成し、今後も緩やかにつながりながら情報交換や企画を進めていくことが決定されました。「定期的に開催し、会場には来られる人だけ来る」という形式で、継続できる場づくりを目指すこととなりました。かっちりとした会合ではなく、それぞれがやってみたいことを軽く持ち寄り話し合う場所づくりを進めていきます。
まとめ

今回の意見交換会(ワークショップ)では、参加者が前向きに10年後の東御市の理想像を描きましたが、魅力度ランキング1位、健康寿命日本一、住みたい街ナンバーワンという複数のビジョンは、それぞれ異なる切り口ながら、「人が活躍できる場がある」「世代を超えた交流がある」「多様な選択肢がある」という共通の要素を含んでいます。
課題として、企画・マネジメント人材の不足や行政の役割の明確化が挙げられましたが、まずは「3ヶ月以内にできる小さな一歩」を踏み出すことの重要性が確認されました。参加者同士がLINEグループでつながり、緩やかに継続的な場を作っていくことで、今回の議論が実際の行動へとつながっていくことが期待されます。
高橋氏が講演で強調した「小さく始めて大きく育てる」「まずやってみる」という姿勢が、参加者の中に確実に浸透し、東御市の未来づくりに向けた新たな一歩が始まった会となりました。

高橋 靖典たかはし やすのり 氏
森のイノベーションラボFUJINO・コミュニティマネージャー/中小企業診断士
- デジタルハリウッド株式会社を経て、地域経営・コミュニティデザインの専門家。行政・企業・NPOを横断しながら、相模原市をはじめ各地でまちづくり、移住促進、地域交通、文化企画などのプロジェクトを推進。“人のつながりを資源に変える”実践者として注目を集めている。
アーティストやクラフト作家のシェアスタジオや、ソーシャルビジネスのためのシェアオフィスを運営する(一社)藤野エリアマネジメント代表理事、古民家宿泊施設やレストランを運営する農業法人 藤野倶楽部顧問、 学校法人シュタイナー学園元理事長、NPO法人グリーンズ 監事、神奈川県中小企業診断協会 地域創生・創業まちづくり研究会 代表。


