2023年12月8日(金)東御市総合福祉センター3階講堂にて、第2回・第3回東御市における共創による地域交通人材育成アカデミー講演会を開催いたしました。
第2回講演会は講師として、群馬県高崎市より一般社団法人ソーシャルアクション機構代表理事の北嶋史誉(きたじま ふみたか)氏をお迎えし、ご講演いただきました。
一般社団法人ソーシャルアクション機構は、ビジネスを通して社会課題を解決する組織として2016年に設立。日本中どこにでもあるデイサービスの送迎車を相乗り活用し交通弱者の移動を支援する「福祉Mover」事業を展開しています。
別法人のデイサービス同士がお互いの送迎車を融通し合い、交通弱者の移動の課題を解決するという画期的な「第三の交通網構築」について、またその新たな形態「介護タクシーモデル」について、実証実験の結果を踏まえてお話いただきました。
地域の移動課題をデジタル化で解決する「福祉Mover」
日本の地方では公共交通機関が減少、タクシーは15年間で40%減少し運転手の高齢化も進みました。一方で、全国で高齢者の運転免許返納・失効、体力低下などの理由により、日常の外出や移動が難しい「交通難民」が増え、このままでは「移動できない社会」になってしまう懸念があります。
この課題解決のためのアイデアが、全国の福祉事業所が持つ送迎車両のデジタル活用。介護福祉サービスの送迎システムを活用すれば、移動が困難な地域住民をスーパーや病院などに送迎できる可能性があり、これにより地域の公共交通機関を補完する「第三の交通手段」として機能させていく構想です。
一般社団法人ソーシャルアクション機構は、このアイデアを実現するために、デイサービス施設向けの車両スケジュール作成とナビゲーションをデジタル化したシステム「福祉Mover」を開発しました。
従来、紙やホワイトボードで管理されていた複雑な送迎網をデジタル化することで、送迎のスケジュールや車両の現在地を可視化。利用者からの送迎リクエストにも効率的に対応できます。
福祉Moverの利用方法はシンプルで、スマホに専用アプリをダウンロードし、事前に行き先(病院や役所、スーパーなど)を登録。送迎を依頼する際はスマホを開き、アプリに事前登録した行き先を選択します。近くを送迎中の車両をシステムが選び出し、車両と利用者を瞬時にマッチングし、利用者は待っているだけです。
デイサービス利用者の、通所日以外の外出送迎に対応するライドシェアの取り組みとして、福祉Moverを活用した実証実験が全国各地で行われました。
高齢者の外出機会が増えることによって介護予防にもつながり、移動課題解決だけでなくヘルスケアサービスの側面もあります。
業務効率化・コスト削減に繋がる外部委託「介護タクシーモデル」
また、デイサービスの職員による送迎業務の負担を軽減する取り組みとして、送迎業務をデジタル化し、地域のタクシー会社に送迎を委託する「タクシー×介護 共創プロジェクト」が2022年群馬県で行われました。
タクシーは戸別に送迎ができる利点がありますが、運転手は利用者の介助までは行えません。そこで“介助もできるプロのドライバー”介護タクシーに、デイサービスの送迎を委託する取り組みが新たに始まりました。
一般的に介護タクシーは病院の入退院に利用されることが多く、定量的な業務がなく収益が安定しないという点から、開業後、続けられずに廃業してしまう事業者も多い現状があります。
そこにデイサービスの送迎業務が加われば、朝昼夕と定量的な仕事が生まれ介護タクシー業者にとってメリットとなります。
デイサービス側でも、外部委託の結果、本来はリハビリや介護・看護の専門家であるデイサービス職員が本業に集中できるという利点もあり、さらに、車両保険料・駐車場・ガソリン代などの車両関連経費の削減が可能となりました。
今後は介護タクシーの事業者を増やし、デジタルシステムを使った介護送迎のアウトソーシング化を進めます。
将来的に、地域の交通事業者、福祉、観光、教育分野など各業界が協業し、送迎をシェアサービス化できれば、人材・資金不足の解消をしつつ、地域交通の利便性向上を実現できるとのことでした。
地域社会全体が協力して、公共交通の補完と地域住民の移動支援に取り組むことで、将来的な課題解決の可能性が浮かび上がる講演会となりました。
北嶋 史誉〈きたじま ふみたか〉氏
一般社団法人ソーシャルアクション機構 代表理事
- 1992年、医療法人社団日高会日高病院へ入職
- 1998年より、株式会社エムダブルエス日高社長就任。同社において、一般社団法人ソーシャルアクション機構を設立。「福祉ムーバー」を開発
- 2022年に同社を退職。同社団法人の代表理事に専念
- 平成28年度(2016年)経済産業省「健康寿命産業創出推進事業」採択
- 群馬イノベーションアワード2016スタートアップ部門入賞
- ぐんぎんビジネスサポート大賞2016優秀賞受賞
- 日本財団ソーシャルイノベーションアワード2019審査員特別賞受賞
- 令和2年度(2020年)経済産業省「地域・企業共生型ビジネス導入・創業促進事業」採択
- 令和3年度(2021年)前橋市「通所介護事業所等の送迎業務効率化DX」実証事業採択
- 令和3年度(2021年)経済産業省「地域新MaaS創出推進事業」採択
- 令和4年度(2022年)国土交通省「共創モデル実証プロジェクト」採択
- 令和4年度(2022年)群馬版MaaSサービス実装(デジタル田園都市国家構想推進交付金)事業受託 等
合同会社まるごとは、長野県東御市での地域活性化の取り組みとして、地域の交通に関する課題解決を目指し、他の地域の成功事例を学ぶ全8回の講演会を計画しています。
デジタルを活用した地域活性化、まちづくりなどの取り組みに少しでも関心のある方はどなたでも講座にご参加ください。